2022/05/16

藤堂省教授に日本人初のスターズル賞

米国のトーマス・E・スターズル移植研究所とピッツバーグ大学医学部外科学教室は「トーマス・E・スターズル賞」の2022年受賞者に、聖マリア学院大学大学院の藤堂省教授(聖マリア病院研究所長)を選出しました。5月3日に米ピッツバーグ市で開催された記念講演・授賞式には元同僚の医学者ら約100人が集まり、藤堂教授の受賞を祝福しました。日本人の同賞受賞は初めて。

スターズル博士(1926〜2017年)は、1967年に世界初の肝移植に成功して以来、臓器移植と免疫学の臨床研究で先駆者の一人となった米国人外科医。同賞は、スターズル博士を讃え、両分野で際だった業績を残した世界の医学者、科学者に贈る賞として設立されました。

1996年の第1回以来、26人目の受賞となった藤堂氏は1984年、九州大学からピッツバーグ大学に留学、スターズル博士のもとで臓器保存法の開発や免疫抑制剤タクロリムスの臨床研究とともに、肝臓・小腸の移植を発展させ、1994年に同大外科教授に就任。在米中に400件以上のドナー調達、1000件の肝移植、100件の小腸移植を実施、数百人の移植外科医を育成しました。帰国後の1997年から2013年までの間、北海道大学教授(消化器外科・一般外科)として生体肝移植を導入、率いるチームは肝移植後に免疫抑制剤を使用しない免疫寛容療法を成功させました。2013年に福岡県久留米市に活動拠点を移し、2020年には一般財団法人「久留米・筑後移植医療推進財団」を設立しました。この間、日米で1,000件を超える研究論文を発表、その半数以上で第一著者またはシニアオーサーを務めています。

藤堂教授は「患者のために働き、人類の福祉の向上に貢献する職業に就くことができたことを誇りに思います。後に続く若い外科医たちに期待しています。地域の皆さんに向けては、久留米・筑後移植医療推進財団を通じて健康や病気、終末期医療、移植医療についての正しい知識を広める活動を続けます」と話しています。

過去のスターズル賞受賞者リストによると、ロルフ・ツィンカーナーゲル博士(スイス・チューリッヒ大学、2001年受賞)とラルフ・M・スタインマン博士(米ロックフェラー大学、2010年受賞)はともに、ノーベル生理学・医学賞、アルバート・ラスカー基礎医学研究賞を受賞しています。また、スターズル博士とともに臓器移植のパイオニアとして知られるロイ・カーン博士(英ケンブリッジ大学、2002年受賞・肝臓移植)やノーマン・シャムウェイ博士(米スタンフォード大学、2004年受賞・心臓移植)も含まれています。

写真は、トーマス・E・スターズル移植研究所のファディ・ラキス所長からスターズル賞のクリスタルプレートを受け取る藤堂省教授=右。(5月3日、米ピッツバーグ市のカーネギー博物館)。